*「世知がない」とよく耳にするがこれは誤った使い方らしい(初めて知った)。
そこで本日は心温まるようなエピソードと、それにまつわる播州の穴場スポットをご紹介したい。
私は元々この話を存じあげていなかったが、先日「ナニコレ珍百景」で紹介されていたのを目にし、「播州鬼散歩ー!」とフィストパンプしてしまった(はっ?)。
なぜならその場所というのが、播州のハートフルシティ、兵庫県小野市にあるからだ。
日本昔ばなしでも取り上げられた「橋の地蔵さん(うつぶせ地蔵)」だ。
橋の地蔵さん

〒675-1369 兵庫県小野市高田町
無料駐車場:なし(お地蔵さんの向かいに車一台停められるスペースあり)
橋の地蔵さんは、小野市高田町という小さな町の一画に、ポツんと佇む知る人ぞ知る穴場スポットだ。
住吉住永線(国道352号)沿いにあり、車では気づくのが難しいかもしれない。
本当に小さな知られざる名所のため、当然駐車場はない。

その他ではひまわりの丘公園や、おの桜づつみ回廊の駐車場を利用して歩いて来るのが現実的だろう。
ともに15〜20分の散歩でアクセス可能だから、元気な人は歩いて向かおう。
逸話

この橋の地蔵さんがナニコレ珍百景に取り上げられたのは、1970~90年代に一斉を風靡した、「まんが日本昔ばなし」で全国的に有名になったことが大きいようだ。
昔ばなしによれば、
毎日お地蔵さんにお参りしていたあるおばあさん。
雨の日も、猛暑の日も、雪の日も、来る日も来る日もお地蔵さんを気にかけお参りし、しかしそれがおばあさんの唯一の楽しみでもあったそうな。
ところが、ある日腰を悪くし、それまでのようにお参りが出来なくなりました。
しばらくしてなんとかお地蔵さんの元へやってきたところ、草がボウボウで荒れ果てた様子。
腰の痛みに耐えながら、なんとか草を抜いてお地蔵さんをきれいにしたおばあさんは、また家へ帰ろうとしました。

ところが、腰の痛みのせいで、来るときには越えられた小川(お地蔵さんの前には小川があった)を、越せなくなってしまいました。
その時です。
「おばあさん、私が渡してあげましょう」という声がしました。
振り返ると、お地蔵さんがドシドシとこっちへ向かってやって来て、小川へ自分の身体が架かかるように、うつ伏せに倒れ込みました。
「さぁ、渡ってくだされ」というお地蔵さんに、「めっそうもない、もったいないそんな … 」と尻込みするおばあさん。
お地蔵さんを踏んで渡るなど、おばあさんには考えられないことだったからです。

するとお地蔵さんは、「私も長い間立ってばかりいて、腰が痛うなっていましたのじゃ。ついでにこうしている私の腰を踏んでくだされ。」そうお願いしました。
そう言われるものだったので、おばあさんは手を合わせ、仕方なく渡ることにしました。
「もったいない、もったいない」そう言いながら拝むように草履を脱いで、お地蔵さんの腰の辺りを踏んでから渡りました。
「お地蔵さん、痛かったでしょう … もったいない、もったいない」それからおばあさんが家に帰ろうとしたところ、あることに気が付きます。

あら不思議、あれ程痛かった腰がすっかり治って、スクっと伸びたのでした。おばあさんは何度も何度もお辞儀をして、お礼を言いました。
翌朝からおばあさんはまた前のように、お花やお餅を持ってお参りするようになりました。
小川に横たわるお地蔵さんと、毎日楽しそうに話をしているおばあさんの姿は、いつしか人々の知るところとなり、お地蔵様のご利益が遠くへ遠くへと伝わっていきました。

それから後は、*霊験あらたかなお地蔵様ということで、遠いところからも人が集まるようになり、腰の痛みが治ったとか、お乳が出るようになったとか、イボがころりと取れたとかいう話は、数え切れないほどだったということです。
*神仏による効験が明らかに表れるさま。 神仏が著しく感応するさま。
なんとも心温まる話である。書きながら私は祖母のことを思い出して泣いてしまった(祖母はまだ生きている)。
久々に日本昔ばなしのエンディング曲が聞きたくたってきた。くまの子みていたかくれんぼ … おしりをだしたこ一等賞 …
その後

1980年代にこの話が取り上げられ、全国的に知られるようになり、小野市はそれを記念して石碑を建立したそうじゃ。
神戸新聞の調べによれば、この橋のお地蔵さんは耕地整理で現在の場所に移され、30年前までは別の場所にあったそうな。
現在の場所から20~30メートルほど離れた田んぼ脇の溝に、うつぶせの地蔵が橋代わりに架かっていたんだとか。
じゃが、場所が変わって以降も多くの方がお参りに来る、小野市の隠れた名所になってきたのじゃとか。
気付けば私の口調も昔ばなし風になってしまうほど、素晴らしく歴史を感じる場所だ。
橋の地蔵さん


お地蔵さんは現在もうつ伏せ状態のため、そのお顔はなんと溝の下側から見る必要があり、写真の撮影は非常に骨を折った。
なぜなら溝が思いの外狭く、身体が入らないため手を突っ込んで確認しながらの作業だったからだ。

そして、こちらが橋の地蔵さんのお顔。なんとも言えないほど穏やかで、優しさに満ちた表情をしている。
私は腰痛持ちだが、お地蔵さんを踏むことは出来なかった。
そっとお地蔵さんの腰辺りをなで、「もったいないもったいない」と呟いて、この場所を後にした。
私の場合、腰痛よりも日頃のストレスが取り除かれるような思いに浸ることが出来た。
本当に素晴らしい場所だった … 。
近々、その時の様子も動画にする予定なので、こちらをチェックしてもらえたら幸いである。お地蔵さんの優しげな様子や、小野市の田園風景をお楽しみ下され。